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建築訴訟鑑定書・意見書の作成

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このページの項目


ダイヤ設計の業務取組の方針と自負について。


1 建築訴訟の鑑定書について そのⅠ

2 建築訴訟の鑑定書について そのⅡ

3 弁護士さんへ一言

4 ダイヤ設計の鑑定書作成の取り組み






当社が作成した鑑定書・意見書です。

   写真-1    


    写真-2   






 
ダイヤ設計の業務取組の方針と自負について。



例えばある案件で、マンションの建物自体にヒビ割れが発生し同時期に地盤においても、不同沈下が発生した事例の「鑑定意見書」を依頼されたとします。

この様な事例の場合の原因の究明と具体的な解決方法には、各分野の専門的な知見が、必要になります。

おおよそ解明には、下記の手続きを経ると考えられます。

①変状箇所の位置とその大きさの計測。

②構造計画及び構造計算に起因したものであるのか?

③構造体であるコンクリート自体に問題があったのか、又は不適切な施工上の問題に起因したものであるのか?

④建物の支持層である<支持地盤>について、設計時の想定耐力が発現したかどうか?

⑤上記の②・③・④の原因が単独で発生したものか、それらが重畳的な原因により発生したものか、等を総合的に参酌して判定する必要があります。

⑥又この建物を継続使用する場合には、<補強工事>又は<改修工法>の提案やそのコストについて、「建物区分所有法」に基づく関係人への説明。

⑦1~5の項目について、各分野の知見を総合的に分析・究明し、その発生原因を特定した上で、鑑定意見書を作成することになります。


従って、専門分野別の<作成コスト>のロスが無い事と、作成期間の時間短縮のメリットにもなります。


考えられる分野として

・建築士 → 建築構造に対する知識
・地盤品質判定士  → 地盤工学的知識
・コンクリート診断士 → コンクリート構造物に対するコンクリート
   工学知識
・土地家屋調査士
 (資格者)
→ 瑕疵発生部位の正確な計測
・マンション管理士 → 建物区分所有法(いわゆるマンション法)


そもそも鑑定書の意見事項の内容について、その案件の見解と事実関係の<作成図面>等は、公的な有資格者によるものでなければ、裁判所に対する説得力に軽重が生じることは否めません。

ダイヤ設計ではこれらの項目に対する関連する事項について、公的な資格を有する者が直接現場にて計測し、その者が鑑定書を作成する為に責任の所在が明らかになり、鑑定書自体の信頼性も当然高くなると自負しております。


       検査機器
    検査機器



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1 建築訴訟鑑定書について そのⅠ



1-1 鑑定書について

① 鑑定の意義について


法律的には、「特別の学識経験を有する第三者に、専門の学識経験に基づき法規、慣習経験則等及びそれらを適用し得た判断の結果を裁判所に報告させ、裁判官の知識の不足を補充して裁判官の判断を可能にする証拠調べである。」と法律書には述べられております。

建築訴訟においては、時にはその論争が細部に渡り過ぎて神学論争的になる場合もあります。裁判官も弁護士さんも、建築の専門家ではありません。
そこで、どうしても建築士や土地家屋調査士等(具体的な数値の計測の場合、建築士では無理な場合があります。)の専門家の意見が必要となります。

専門知識を必要とするといっても、私見ですが、通常の建築訴訟の場合はそれほど観念的な高度な専門知識でありません。あくまでも、具体的・数量的・定量的のものへのアプローチ、と言えると思います。


② 裁判上の鑑定と私的鑑定書(鑑定意見書)

○裁判上の鑑定

当事者の申し立てにより、裁判所が選任する鑑定人よる鑑定書のことです。通常は、大学の先生や公的機関のその道の研究者が選任される場合が多い、と考えて良いとおもいます。

裁判所はその鑑定人の鑑定結果を尊重するが、その証拠価値の評価については裁判官の自由な心証に委ねられています(自由心証主義)。しかし現実には、裁判官は建築に関してはほとんど素人であるため、この鑑定にかなり強く影響をうけます。

しかし、実務家からは「裁判上の鑑定」の中に余りにも出来の悪い「問題鑑定」が多すぎることが挙げられいます。

○私的鑑定書(鑑定意見書)

今、ここで縷々述べている鑑定意見書のことであり、訴訟当事者が依頼する鑑定人が作成する鑑定書または鑑定意見書のことです。


③ 裁判所選任の鑑定人の鑑定書は両刃の剣

双方の主張を鑑定意見書等においても尚その内容に食い違いや、その主張に食い違いがあり裁判官にとって充分の確信の得られない場合などに、この鑑定人を選任することが本来のあり方ですが、いきなり裁判所からの両当事者の了解の基にこの裁判所選任の鑑定書で勝負をする場合もあります。

裁判所選任の鑑定人の鑑定書の場合に問題となるのは、双方にとり予定外の鑑定結果が提出される可能性があります。こちら側に不利な鑑定結果もあり得ることになります。前記に述べたように、問題鑑定もあります。武器になる反面、かなりのリスクも伴うということなります。

又、地方裁判所(1審)で認められた事項が高等裁判所(控訴審)でひっくりかえる場合など、正に、この鑑定書を裁判官がどのように評価するかに大きく影響するためです。
裁判官も人の子だからこの鑑定書の結論に安易に頼る傾向にある、との批判も実務家からある所です。


1-2 私的鑑定意見書について

① 私的鑑定意見書の持つ短所と限界


○裁判官として、私的鑑定意見書とは原告側や被告側から依頼をうけ報酬を受けての意見であり判断であり真実公正の立場からの専門家の意見である、とは当初から考えてはいないと言うことです。

○相手側が著名な一流の建築家であったり、同業の建築士であった場合などその事件の私的鑑定人を探すことが、現実の問題としてはなかなか困難な場合が多いのが実情です。

特に住宅関係の建築訴訟や欠陥住宅訴訟については、相手方に対する訴訟金額が他の事件と較べて相対的に小額の為、訴訟の初期段階において、鑑定書作成コストは依頼者側に負担を強いる結果となります。

又、例えば裁判の結果200万円の損害賠償金は取れたが、弁護士と鑑定人の費用が200万円では裁判など最初からしないほうがよかったかもしれません。費用対効果の問題は経済活動だけではありません。依頼者にとっては、現実的な切実の問題となります。


<コメント>建築訴訟における鑑定人の探し方

○一勝負終った人
○若い人には酷な仕事


鑑定書を作成する為には、事案により測量機器や各種検査器具等をそろえたり、鑑定人1人だけではなく、補助者を必要とする場合も多いのです。その為の設備投資も必要になります。そのコストは、最終的には依頼人の負担になるはずです。

事案により、<目視>のみによる場合でも鑑定書作成可能の場合もありますが、(擁壁関係のトラブルの場合)このような事例は少ないといえます。。

そして、現地調査に基づき鑑定調査報告書を作成するわけですが、建築の訴訟は通常技術論的な因果関係の論争なるので、事案によりかなりの裁判の長期化になり易いのが現実です。1回や2回の現地調査では済まない場合も、裁判の成り行き次第ではあり得ます。

一方、一勝負終った人(子育て、ある程度の自己の仕事、若いころの夢、趣味道楽の達成の人等)は、ある程度の自分の建築の設計や、現場の施工の問題、契約の問題工事監理等でかなりの失敗と経験を経ております。何よりも良いことには、それほど稼ぐ必要のないことにあります。若い人々よりも、時間もあります。

又、建築士は多かれ少なかれ、建築業者から完全に経済的に自立や独立している人は少ない、という現実がその背景にあります。中には、中小ゼネコンに奴隷のごとく隷従している建築士もいますがそれが現実の姿なのです。

バブル崩壊後においては、この点ますます顕著になっております。そして、建築士として30代40代で活躍している人は、妻子を抱え、その子弟の教育等生活コストが掛かり、中にはマイホームのローンも完済していない場合もあり得ます。

このような若い人々に、半ボランテイア的な仕事(事案によっては、ボランテイアにならざるを得ない場合があります。)を依頼しても、その人がこの事件の仕事を真面目に取り組んだ場合は、かなりの赤字になるはずです。労多くして報われることの少ない仕事といえます。

しかし、最近ではNPOを作りこの団体が金を取り講習を要件として認定書を発行したりして、商売として活動しているグループもありますが、私はこの仕事を真面目に考えた場合には、本質的には商売としては馴染まない仕事であると考えています。

又、欠陥住宅問題に真面目に取り組んでいる弁護士さんのグールプの代表者がこんなととを言っております。『優秀な鑑定家はその能力により短い時間そして少ない作業量で仕事をするのに対し、これより劣る者がその能力故に多くの作業量を要するだけなのに多くの報酬を受け取る、というものも社会的には是認されなことである。』。

全く至言であるだけに、我々この仕事に携わる者にとって耳の痛い話しですが、この問題は人間の本質に結びつく事象であって、第三者的判断機関でもない限りその様な能力のない人々を、この分野から駆逐することは現実には困難です。

何故なら、現実の技術屋の世界や士業(侍業)と言われる世界では、能力の無い人ほど真実自分は能力がある人間である、と信じている場合が多いのです。


② 私的鑑定意見書の持つ長所 (先手有利の原則)

私的鑑定意見書を作成することは、相手側の主張に先手を打つとともに、訴訟のイニシアチブをとる事になります。相手側がこの私的鑑定書の主張に不満であるならば、相手側も又、私的鑑定書でこちら側の主張を反論せざるを得ません。

そうでなければ、相手側としては<裁判上の鑑定>の申し立てをせざるを得ない事になります。

<コメント>
通常の建築訴訟においては、経験のある弁護士さんであるならば大体のシロクロの判断はつきますので、この専門家による私的鑑定書はかなり有効な証拠となり得ます。<裁判上の鑑定>がなされても、こちら側が有利であると判断のつく場合にはかなり有効な手段となります。


③ 作成上留意すべき事

建築士の作成する鑑定意見書のなかでよく見られるのですが、「何々の事象については、明らかに何々の瑕疵が存在する」などと記載されているのがよくありますが、このような文言はまちがいです。

建築訴訟においての瑕疵の認定は裁判所の法律判断事項です。建築士が判定することではありません。
弁護士さんに、現地踏査上で気のついた箇所の瑕疵を挙げてください、などと依頼する人がいます。これでは、建築士の自己の仕事のまる投げです。

建築士が調査報告者を作成する意義は、「現場踏査し関係法令と現場を照らし合わせ、その部位を証拠の為に必要であれば計測し、その原因とそうなった結果との因果関係をその報告書に具体的に記載すること」、ここまでです。それ以上でもそれ以下でもありません。瑕疵であるかどうかについては、裁判官の範疇に属する法律判断です。

沢山の事項を不都合箇所にする必要は無く、たとえば主要構造部、又はその構造計算に至った構造計画自体の適否に論点とエネルギーを集中させるべきです。自信の無い建築訴訟に不慣れの訴訟代理人さんほど、論点、争点をしぼれずに沢山の項目を訴状に記載する傾向にあるようです。


④ 裁判官の胸裏形成プロセスについて

想像の範囲ですが、双方から提出された鑑定書等を基に裁判官が結論を出す場合、心中内部では、大体つぎのような経過を経ると考えます。(自由心証主義の下での心証形成の過程)双方のどちらの主張もそれなりの理由がありその主張するところの参酌の割合判断については、鑑定書に記載されている具体的、個別的主張項目よりもむしろ、その鑑定書全体からの印象や鑑定人の人柄に影響されるのではないでしょうか。

そして、最後には自己の今までの経験と本人の良心に基ずく<直感>で参酌の割合判断の結論をだす。そうであるなら、それが私的鑑定書であっても、中立・公正な鑑定書を作成すべきであると考えます。したがってつぎに述べるような鑑定書は、説得力のある良い鑑定書とはいえないはずです。

A すべての事項につて反論して、自己側の非は一切みとめていない鑑定書。
B 感情的で相手側鑑定人の能力とその不適正を指摘し、その個人的な人格攻撃にいたる如き鑑定書。
C 鑑定書の中に、その鑑定人個人の経歴、建築士等資格と登録番号、その個人の所属する団体名、又、使用した機器の型式、その性能、誤差の範囲、この計測を誰が責任をもって実施したのか、等々の記載されていない鑑定書です。

上記のごとき鑑定意見書は、各論で有利な場合があっても総論で大きく減点される可能性あがあり、留意すべきであるとおもいます。

<コメント>

法曹界でも裁判官の世界は他の分野の世界と比較して、まだまだ正義と建前の世界が貫かれている世界です。
そして、基本的にはいわゆる<真面目な裁判官>が存在しています。そのような裁判官を説得できる鑑定書を作成する必要があるはずです。


1-3 なにを基準とするか

法律の数(衆議院法制局調べ)は現在1500件強ということですから、そのなかで、建築訴訟のばあいの基準法令としては、憲法、民法、都市計画法、建築基準法、(同法施工令、施工規則、省令の告示)が適用される法令です。

我々が鑑定書の依頼を受けて問題となるのは、次のような場合です。

請負契約書が当初から存在しない場合や、請負約款、特記仕様書、契約の為の設計図書、設計監理契約書、等々契約上不存在であったり、ある程度は存在するが、その内容があやふやの場合です。

このような場合の鑑定意見書の作成は議論が抽象的になり勝ちで、裁判官を納得させる議論に展開しないことになります。他人の書いた鑑定書を読むとよく判るのですが、なかには自己の高邁な理論展開に酔いしれて、その鑑定書を誰のため、何の目的で、という根本のところから乖離しているような鑑定書があります。書いた本人は満足しているようですが、そのコストを負担する依頼人には迷惑なはなしです。

また過去には裁判所の選任の鑑定書の中にさえもこの様な鑑定書がありました。
(もしかすると、担当裁判官自身が求むべき鑑定事項を的確に絞りきれないで、いわゆる「まる投げ鑑定」になっていたのかもしれません。)


① 公庫の仕様書は基準足りえるのか?

下記の文章は、参考として挙げておきます。


住宅金融公庫の仕様書も基準になるのだというお話をしましたが、これは、基本的に契約書だけでどのような建物を依頼したのかが、はっきりしないケースが割と多いのです。

その関係で、基本的には契約内容がはっきりしていない、設計図書等がはっきりしていないという場合は、最低限の基準を定めたとされる建築基準法令、少なくともそのレベルは満たすという合意があったのだということを主張をして、そのレベルを基準だと主張していきます。

さらに、建築基準法関係の法令でもはっきりしてこない部分がありまして、それを住宅金融公庫の仕様書などはより具体的に規定している部分がありますから、その住宅金融公庫の仕様というのを今度は基準として使用していく。少なくとも、そのレベルの建物は建ててくれ、という約束があったのだという前提で、そういう主張をしていきます。

住宅金融公庫の目的が住宅金融公庫法に書いてありまして、その一条で「国民大衆が健康で文化的な生活を営むに足る住宅の建設及び購入に必要な資金を銀行などの金融機関が融資することが困難であるという場合に融資する」という規定があるのです。

ですから、銀行が融資してくれなくても金融公庫は融資してくれる建物ということで、もう最低限の性能を持つ建物として規定されているのだというように主張できるのだと思います。

実際に住宅金融公庫の仕様書を基準にして欠陥判断をした判例もあります。一つは松江地裁の西郷支部の判決です(昭和六一年一〇月二四日)。これは判例集には載っていないようですが、『欠陥住宅被害救済の手引』六一真には紹介してあります。それから、阪神大震災で倒壊した家屋についての判決が神戸、、、

          
          「東京弁護士会編 弁護士泣かせの建築紛争解決法」より抜粋 ・文字色作者記入


② 共同鑑定の必要性

建築訴訟のその具体的内容は多岐にわたるのが通常です。その具体的内容を大別すると以下のようになります。

1 設計契約上の問題点
2 設計図書の問題点
3 設計監理上の問題点
4 現場施工監理、管理上の問題点
5 施工不備の問題点 (そしてその不都合部位が建築躯体に関する事項、躯体コンクリートの関する事項)
6 建築設備(機械設備、電気設備、空調設備等)にかんする事項
7 建築基礎構造に関する事項
8 構造計算書の記載内容の事項  等々です。

これらの事項につて一人の建築士がすべてカバーすることは困難です。
鑑定書を作成する建築士もまた、建築に関するそれぞれのその部門の専門家のアドバイスを受ける必要があります。


1-4 鑑定人の選び方

建築士等は鑑定人になりたくない。その理由として、私的鑑定意見書の持つ短所と限界の箇所でも既に述べたのですが、建築業界からの経済的自立の問題やその他にもこんなところにもあります。

○建築関係というある意味小さな<村社会>の中で、場合により同業者を追及、攻撃することは、いつかやがてはその矛先が自分自身にくるのではないかという不安。

○裁判所と言う不慣れな場所で、宣誓などさせられていやな思いなどしたくないこと。

○刑事訴訟法と民亊訴訟法の法的構成の認識不足の為、ときには被告(被告人にあらず)側のための鑑定書を作成することに、ためらいがあること。

○建築、土木等の総合的専門知識の不足。 等等が考えられます。


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2 建築訴訟の鑑定書について そのⅡ


私の事務所が本来の設計業務のかたわら、建築訴訟の鑑定書の作成を業務内容の一部に加えた要因は下記によるものであり、事務所の設立時からの事業品目であったわけではありません。設計事務所を開設した間も無い昭和56年に、3階建の鉄筋コンクリートマンションの設計監理の仕事を受注した時にはじまります。

確認申請の手続が完了し杭打ち工事の着工直前に、隣地土地所有者から、「日照権」の侵害、ということで民事訴訟を提起されました事にはじまります。

その当時は未だ、今日のようにそれほど日照権と言う権利が、独立の被保全権利として明確に法的に確立されておらず、また、建築基準法上の「日影規制」の条文もありませんでした。中高層の建築確認を市役所に提出すると、行政側の取り扱いと対応もまちまちであり、我々建築事務所側にとっても行政側との間で混乱している時期でした。

又、日照権間題に関する判例も統一されていないため、この事件の東京地検担当判事さんも、我々が読んでいる日照権に関する書籍と同じ物を読んで勉強している状態でした。(判事さんの机の上に同じ書籍が沢山ありました)結局この事件は和解ということで決着いたしましたが、この最初の訴訟を契機として建築訴訟に関する基本的な事を学ぶことができました。

例えばこんな事です。


① 考えてみれば当たり前のことですが、裁判官は建築に関しては全くの素人であること。


鑑定書等を建築士が作成するに当たって留意すべきことは、建築上の技術的専門用語は一般的な用語に置き換えること、構造の計算式についても、同様にそれを一般的な「平ら言葉」で再度説明し直す必要があること。

このことは簡単なようですが、大変難しいことです。作成者本人にとっては解りきった事を平ら言葉に直すことは、かなりのストレスになります。
又、作成者側にも本当の意味での建築的、技術的能力が要求されることを痛感しました。


② 民事訴訟は、弁論主義の下で原告と被告の「総力戦」であること。

原告であれ、被告であれ、実質的な勝訴にする為には、攻撃・防御の過程のなかで沢山の訴訟資料が必要になります。そしてこの訴訟資料には全て作成のための「コスト」がかかります。こちら側にとって有利な資料を提出可能な場合でも(特に図面関係に多い)、費用の関係で出来ない場合もあります。

より有利に相手側の主張に対して抗弁出来る場合でも、依頼主側の経済的事情で、技術者として納得の行くまで相手側に抗弁できない、という悲哀を感じました。


③ 経験の豊富な弁護士さんは頼りになる事。

この事件を担当してくれた年輩の弁護士さんは、ぜんぜん建築の事も、無論日照権のことも始めての人でしたが、建築主と私に、資料の提出をうるさいほど要求する弁護士さんでした。そして、担当判事さんをまるで自分の子供のように扱い、本来の判事さんの訴訟指揮権のお株を取るような、頼りがいのある弁護士さんでした。

訴訟代理人の選択は、慎重かつ時間をかけて依頼すべきであると痛感しました。



  
3 弁護士さんへ一言

建築訴訟においては、刑事事件の訴訟とは訴訟内容が本質的に異なり、一審死刑、控訴審では逆転無罪、というような劇的な逆転判決はあまり出ないようです。(もっとも弁護士さんが、控訴審においてよほどの手抜きをしない限りですが。)

建築訴訟は、その判決の内容が大方損害賠償額の算定に収斂する為、勝ち負けなどという概念自体馴染みにくい訴訟形態なのかもしれません。

しかし、明らかにこちら側が「負け」としか判断せざるを得ない判決を受ける場合があります。このことは、私の作成する鑑定書自体の出来の悪さもあるわけではありますが、弁護士さん自身の訴訟戦略にも問題があるのではないかと思われる所があります。

この点について、今までの、「負け戦」の経験から、若干気のついた項目について述べてみたいと思います。

その前に、何故このような判決に至ったかという遠因を、民法という法理論(上部構造)はさて置き、裁判官の『人となり』(下部構造)の部分から想像する範囲で考察してみます。

何故なら、判決の最終結論である損害賠償額の数字が、純粋の法理論からばかりではなく、他に判断の拠り所となった遠因がなければこのような損害賠償額が提示されるはずがない、と考えなければ、理解不可能と思われる判決もあるのは事実です。

しかし、私の少し穿った見方からすれば、大部分の建築訴訟の判決が、損害額の算定であり、要するに銭金=ゼニカネの話にすぎません。マスコミに取り沙汰されるような、人間の命や基本的人権に関するような審理内容ではありません。

大方は、いわゆる「雨漏り訴訟」といわれる範疇の事件が現実です。恐らく裁判官としては、個人的にはあまり興味の持てる種類の事件内容ではない事が想像できます。

建築訴訟は又数学的な分野にも関係する場合が多く、人文科学的な法学に対して、自然科学的な要素の多い分野である建築は、本来的には裁判官の得意な分野ではありません。

本来、裁判のあるべき姿としては、事実認定⇒心証形成⇒法令適用⇒判決 となるわけですが、建築訴訟のような複雑な訴訟形態で、且つ、個々の技術的な争点を勉強しても、他の訴訟事件の参考事例がデーターとしてあまり利用価値がない為に、いきおい裁判官としては、訴訟経済寄与?の為、担当事件の判決数ノルマ達成に走るわけです。

自由心証主義の名の下に、原告、被告双方の主張する内容を具体的に精査することなく、いわゆる良心的ドンブリ勘定(心証形成時において、結論=金額が先にあったような状態)的な決断で判決に至る場合もあるはずです。

しかし当然に裁判官は法律のプロでありますから、第三者の批判にも耐え得る内容とはなっております。判決文の内容においては、賠償額と、その適用した法令とにおいては整合性があります。

建築訴訟の判決の背後にこのような遠因が仮にあるとしたなら、弁護士も建築士も、建築訴訟に携わる上で、この現実に対応する必要があるかもしれません。


裁判官の人となり

○一般的に言って、裁判官は鑑定意見書等の内容について、その内容を真からは読んでいないと思われます。無論、一応目は通すはずですが、建築訴訟の個々の具体的内容については、精査し、理解することなど、現実的には不可能ではないかと思われます。

従って、鑑定意見書を作成する我々建築士においても、いかにしてその言わんとする意見を裁判官に読んでもらうかということに十分留意する必要があります。

意見書の内容が不的確で確信をついていない為、やたらに添付コピー書類が多い鑑定書も見受けられますが、そのような意見書は裁判官の心証形成には役立たないと思います。

この為、比較的小さな瑕疵については、賠償額に反映させない傾向があります。

以前手掛けた事件で、新築建物の壁の中に、施工時の建築材料を廃棄した事件がありました。現地調査の折、その事実が判明し、当方としてはかなり有利な訴訟材料と考えたわけですが、判決文のなかでは4万円程度の賠償額しか認められない事例がありました。この事例など、もしその担当裁判官が自分で建物を発注したのであれば、このような金額の判決にはならなかったであろうと思われます。

○今までの裁判官との関わりから言えることですが、一般的に裁判官は真面目な人間が多いようです。

「真面目は不真面目よりも上部に位置する程度の価値でしかない」とでも言いたくなるような裁判官が多い中で、その裁判官の漠然とした賠償金額算定心証形成(法理論ではなくそれ以前)の最初の部分、すなわち良心的ドンブリ勘定算定時にエフェクトするような主張をすべきであると思います。


具体的な対応について考えること

① 瑕疵部分の積算金額の算定について

大体の弁護士さんは、建築士に瑕疵部分の補修工事費の算定金額については、訴訟テクニックとして、実際の工事費よりも高めに計上するように要請する場合がありますが、この点について私見ですがそろそろ考え直す必要があるかもしれません。

このような従来型の請求は、全体として、鑑定意見書の各部分の内容や主張を実際よりも低く評価されるような気がします。
建築訴訟の判例をみても、賠償額が満額認められた判決例には、むしろ現実の補修価格よりも、低めに請求している場合がみられるからです。


② 相手側の主張に対して全て反論しないこと。

通常被告の立場の場合、意見書等を弁護士さんから依頼される場合、相手側の主張に対して全て技術的に反論するよう依頼される場合があります。この方法論も得策とは思えません。

何故なら、通常被告となった以上、故意、過失は問わず、多少はこちら側にも非はあるのが普通ですから、賠償金額にそれほど反映されない項目については、その非を認めたほうが、全体としての賠償金額を少なくする可能性があるかと考えます。

前記「裁判官の人となり」で述べた如く、裁判官は真面目な人が多く、自己の非を一切認めない偏屈者に対しては、法令適用以前の段階で、すでに心証を悪化させるような気がします。
民亊訴訟を貫く弁論主義の大原則も、個々の事案においては、ホドホドにという大人の発想が必要ということでしょうか。


③ 争点に優先順位を

こちら側が被告になった場合において、原告側の瑕疵部分の主張に対する反論をする場合、(なにしろ原告側の立場では、ありとあらゆる事項について主張できる立場におります。)それら全てに軽重をつけず技術的に反論をすることは、限られたコストと時間では無理があります。無論適当に反論することは簡単ですが、このような鑑定意見書は大きな意味であまり得策とはいえません。

裁判の過程の中で、担当裁判官が特に興味を示している事項や、金額に大きく関係する事項に、限られた<訴訟エネルギー>を集中したほうが得策であると考えます。


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4 ダイヤ設計の鑑定書作成の取り組み

近年、戦後最大の「建築基準法」の大改正(阪神淡路の大地震以来、特に構造計算の基準に付いては、従来になく大きく何回となく変更されています)、及び「住宅の品質確保法」の成立、つい最近では「マンション建て替え適正化法の成立」等々、住宅建築に対する法律は目まぐるしく進展しております。

それらの事象を反映して、建築に関する紛争の内容も複雑、且つ専門的になってきております。又、社会的な問題ともいえる欠陥住宅等の紛争事件も、消費者としての権利意識の高まりから以前よりも多発しております。

当事務所のモットーとしましては、特に欠陥住宅等の訴訟関係では、依頼者の置かれた経済的事情を考慮して、弁護士さんとの事前打ち合せ(鑑定依頼事項の段階で)による、争点・勝訴の可能性・事件の難易度・前訴訟記録の照査等の調査事項を特定し、従来型の単に調査鑑定書の枚数をふやし、機械的な作業時間数による請求金額の決定を排除いたします。

(調査鑑定書の価値は、作成者の経験と能力に大きく依存します。作業時間の多少に比例しません。)

弁護士さんによっては、単に欠陥事項の指摘とその原因のみの依頼だけで、その欠陥の重要度の検証等の打ち合せを、我々建築士としない先生もおります。これでは勝訴しても、弁護士さんと鑑定人の費用に満たない場合がありました。
実質的な勝訴及び和解で無くては意味がありません。

法律の専門家でない私が言うのも潜越ではありますが、私は[重大且つ構造上の欠陥]に集中して論点をしぼることに尽きると考えています。

又、埼玉の県南地域の建物の瑕疵原因の大部分が、敷地の軟弱地盤に起因していることも特徴的です。(この地域が日本で二番目に地盤沈下の激しい地域である事を、正しく認識している建築士や専門家がほとんどいないというのが現実です。)


◎建築訴訟の特徴を集約するならば、下記の四点に絞ることが出来ると考えております。
① 責任の所在確定の困難性

工事の完成までが多種の部門に分かれていること、その結果、又、多くの下請負人が関与する為、瑕疵等の原因解明とその責任追求が困難になる。建物完成後は特に瑕疵担保期間との関係で問題を複雑にします。


② 技術的、専門的な紛争であること

紛争の多くは瑕疵問題に見られるように、雨漏り・ひび割れ・床スラブのたわみ・配管設備の不良・騒音・震動・地盤の沈下・擁壁の崩壊等々で多様であります。そしてこれら現象が基準許容限度を超えるかの認定と、その原因の解明にあります。

それが設計ミスか・材料によるか・工事施工上のものか・又はそれらの複合作用に因るものか、その原因の解明は技術的、専門的判断を必要とします。そしてこれらの建築士としての判断が、鑑定書等として集約されます。
そしてこの場合、裁判官の自由心証主義の下では、やはり測定機器等の具体的、客観的なデ-タ、写真等を添付したほうが、より説得力があると考えます。


③ 訴訟関係人が複雑である事

通常建築工事は、発注者と工事請負人との請負契約により行われる。しかしこの契約に附随して監理建築士、工事完成保証人、金銭の保証人や下請負人、孫請負人等々が複雑に絡み合います。


④ 裁判官は、建築に関して素人であることの認識

②の内容と重複する事項もありますが、専門用語の羅列ではなく、高尚な技術用語での理論展開は、裁判官に何もアッピールしないと認識する事。

裁判官の最後の判断基準の拠り所は「社会通念」にある、と認識すること。



以上です。




尚、訴訟資料等の作成のため、当事務所では鑑定・診断用機器を常備保有しております。通常の建集関係の紛争では、充分に対応できると考えておりますが、御依頼の内容によって下記保有以外の機器が必要な場合については、リースにて対応いたします。

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